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2024年度入学式 学校長 式辞

2024年度入学式 学校長 式辞

本日、ここに大阪病院附属看護専門学校に入学されます第13期生43名の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。皆さん方と、これから一緒に学べることを楽しみにしています。またご家族、ご親族の皆様方におかれましても、ご入学心よりお祝いを申しあげます。
紹介にありましたように、私は大阪病院病院長と本看護専門学校の学校長をしております西田と申します。宜しくお願い申しあげます。先程13期生と申しあげましたが、本校は、創立以来67年の歴史を持ち、この後歌う校歌も古関裕而さんの作曲で歴史ある看護専門学校です。

さて、入学生の皆さんは、高校を卒業或いは一度社会に出た後、医療、特に看護の道を歩もうと決心し、本校に入学されたと思います。
2020年より猛威を振るったCOVID-19は、昨年5月に5類に位置づけられ、パンデミック下で求められた行動制限は徐々に解除されつつあります。ただ、皆さんまだマスクをしてます。つまり、まだCOVID-19の影響が社会的に心理的に残っています。
パンデミックの3年間、ひとと人とが直接会い触れ合い話す機会は少なくなりました。幸い、オンラインで情報のやり取りやコミュニケーションができるようになりました。WEBで講義を受けたり会議をしたり、友達との連絡はSNSでする様になりました。コミュニケーションや事務処理は合理化され、パンデミック下でもそれ以前と変わらずできるようになりました。でも、Virtualだけでは、何かが足りない。最新のテクノロジーを使っても、本来の人間関係の構築~つまり絆が中々できない。多分、人と人とが直接触れ合わないと成立しない何か~マスクのようなものがまだ残っている様に思います。

実は、皆さん方がこれから進む、医療~特に看護の世界では、今申し上げたテクノロジーでは十分には解決できない人と人の関係~具体的には、患者さん家族と医療者の信頼の絆を築くことが重要です。医療は医療者だけがするモノではなく、患者さんと一緒につくりあげる過程です。医療は時に不確実で、同時に一定のリスクを伴います。例えどんなに良い医療であっても、患者さんとの良好な人間関係なしに、不確実でリスクのある医療を提供することはできません。皆さん方は病院の現場で出ると、患者さんとの相互理解のコミュニケーションを通し信頼関係をつくり、患者中心医療を提供することが求められます。その為にはFace-to-Faceのコミュニケーション力と共感力が必要になってきます。

高校時代、文科省の考え方で、表現力やSTEMの力を付けるように指導されてきたと思います。STEMって?と思っている人がいると思います。STEMのSはScienceつまり科学、Tはテクノロジーで工学。EはEngineeringで科学技術、MはMathematicsで数学です。確かに科学技術立国になり、今落ち込んでいる日本の経済を立て直すにはSTEMや表現力は重要です。医療にも必要です、私が以前勤めていたがんセンターがやっている医療開発には。

ただ先程申し上げました様に臨床現場や看護には、STEMでは解決できない能力が必要です。つまり、医療の現場で求められるのは共感力と健全な人間関係を育む人間力です。
質が高く、患者さんが安心して医療を受けるには、健全な患者医療者関係の上に構築されるチーム医療は欠かせません。そして看護には患者さんの思いを汲み取る共感力が必要です。

学校長として、この学び舎で過ごす3年間、医療の知識や看護のスキルを学ぶだけで無く、同期や先輩・後輩、友人や先生、そして実習の際には病院の職員とのやりとりを通して、コミュニケーション力を付け、良い人間関係を造る人間力を磨いて頂きたいと思います。

人生には想定外の出来事がつきものです。偶然の出会いや予期せぬ出来事は必ず起こります。良いことも、悪いことも含め。そうした人生でどうしたら幸福になれるか検討した研究があります。
ハーバード大学の学生などを対象とした幾つかの研究から、高収入や高い社会的地位は、必ずしも幸せな人生を保証するものではないことが解っています。逆に、ソーシャルフィットネス、つまり健全な人間関係は幸せな人生には欠かせないことが示されています。
人間力や共感力を基盤とするソーシャルフィットネスは、皆さん方が将来提供する医療や看護の質を上げるだけでなく、あなた方自身も幸せにします。

最後に、今日出会った新しい仲間、先輩や後輩と良い人間関係を築き、共感力があり明日出会う患者さんのことを思いやれる人になって頂けることを祈念して、学校長の式辞とします。

2024年4月8日

大阪病院付属看護専門学校 学校長 西田俊朗