独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院

診療科のご案内

上部消化管

出村

出村 公一
でむら こういち
役職
外科部長(上部消化管担当)
経歴
1998年 滋賀医科大学医学部卒業
専門分野
上部消化管外科

内視鏡外科
資格
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外外科学会専門医・指導医
日本食道科認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)
日本胃癌学会代議員

特徴

高齢化社会に伴い様々な疾患を併存されている患者さんが増加しています。個々の患者さんの状態や希望に合わせた治療が必要であり、当科では集学的治療や低侵襲治療まで幅広く対応させていただいています。高度進行胃癌に対しては化学療法や手術を組み合わせたあきらめない集学的治療を行い、手術に関しては低侵襲な腹腔鏡手術を積極的に行っています。当科消化管外科スタッフは全員内視鏡技術認定医を取得しており、質の高い内視鏡手術を提供させていただいています。最小限の臍部創のみにて行う単孔式腹腔鏡手術も取り入れています。

診療内容

食道癌、胃癌をはじめとする悪性腫瘍に対する化学療法、手術を含めた集学的治療を行っています。
手術に関してはほぼ腹腔鏡手術です。

GISTなど粘膜下腫瘍に対する手術。臓器温存を目指して最小限の切除を目指しています。術中内視鏡を併用したLECS(腹腔鏡内視鏡合同手術)や、胃内手術なども積極的に行っています。

食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎など良性疾患に対する手術も行っています。

減量・代謝改善手術について

◇「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」とは

肥満が生活習慣病といわれていることは、多くの皆様がご存じだと思います。肥満は随伴する肥満関連慢性疾患を引き起こし、脳卒中や心臓病などの重篤な病気にかかる危険性や余命を縮める恐れがあります。これまでは、運動療法や栄養管理を行う食事療法、薬物療法といった治療が行われてきましたが、生活習慣病の改善に至らず、高度肥満症と診断されるケースがあります。

そのような背景下、近年日本でも高度肥満症に対する治療法が見直され、内視鏡下による外科的手術が行われるようになりました。中でも「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」は先進医療として承認され、保険適応されていることより、当院においても積極的に取り組むこととなりました。

◇どのような手術、治療法?

少しの食事でお腹がいっぱいになるように、胃の容量を100ml程度に小さくするため、胃の外側を80%程度切除する手術です。手術の所要時間は約3時間から4時間程度です。

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〖手術適応対象者〗

◆BMI35以上の高度肥満がある
◆糖尿病•高血圧症•脂質異常症•睡眠時無呼吸症候群を合併している
◆6か月以上の内科治療によっても十分な効果が得られない

◇糖尿病内分泌内科と外科とのコラボレーション外来を開始。

当院では、2022年9月より高度肥満症に対する減量•代謝改善手術を開始しました。外科、糖尿病内分泌内科、神経精神科の医師、臨床心理士、管理栄養士、理学療法士並びに看護師と専門職種にてチー厶を立ち上げ治療に当たっています。
通常は診療科単位で外来枠を設け、各診療科の医師が外来を担当しますが、減量・代謝改善手術では、外科専門医と糖尿病 内分泌内科専門医がタッグを組み、外来を担当します。総合病院として、安全にかつ安心した治療にあたれるよう、日々研鑽を重ねています。

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診療実績

診療実績(2023年度)
疾患名 手術数(うち腹腔鏡)
食道 6(6)
胃・十二指腸 34(34)
粘膜下腫瘍(GIST など) 11(11)
単孔式腹腔鏡下胃切除術

単孔式腹腔鏡下胃切除術

ほぼ傷跡は残りません

ほぼ傷跡は残りません


詳細について

はじめに、当院で扱う疾患 上部消化管外科で扱う主な疾患は、胃癌、食道癌、胃粘膜下腫瘍(GISTなど)、食道裂孔ヘルニア、PEGなどですが、あらゆる上部消化管の外科疾患に対応しています。主な疾患及び、当院の取り組みを紹介させていただきます。

胃癌とは 胃癌は日本、中国、韓国をはじめとする東アジアに多い病気です。日本において、癌種別の死亡率の中で、胃癌の死亡率は男性で第2位、女では4位(2018年)であり、罹患率では男性で第1位、女性で第3位(2016年)です。5年生存率と言われる治癒率は約60%程度ですが、早期に見つかれば90%以上の治癒が見込めます。特に日本では、健康診断を積極的に行っています。皆さんも、職場で胃癌検診を受けられたことがあると思います。実は日本でしか行っていない検診です。症状もなく検診で見つかれば早期に発見できる可能性が高くなります。実際胃がんの患者様の中で早期胃がんの患者様の割合は60%程度です。
胃癌の初期段階では、自覚症状があまりないため早期発見のためには検診を積極的に利用する必要があります。胃癌のリスクは40代から増加し始め、50代60代70代と年齢を重ねるにしたがい増加します。当院でも胃がん検診を受け付けていますので積極的に検診を受け、胃がんと診断された場合は専門医に相談して下さい。

胃癌の診断・治療

胃癌の治療は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に基づいて、正確な進行度の診断を行い、それぞれの進行度に応じた治療を行います。

胃癌治療

胃癌治療の主なものは①手術治療②薬による治療 があります。
それぞれの進行度に応じて最適と思われる治療を患者様と相談し、治療していきます。近年では、①手術治療と②薬による治療 を組み合わせて行う方法が多くなされています。

① 手術治療

従来からされている開腹手術と腹腔鏡手術があります。それぞれの治療の特徴があるため、進行度や治療方針によって選択します。しかし、当院では下記に示す通り腹腔鏡に力を入れており、多くの手術は腹腔鏡にて行います。
胃癌に対する腹腔鏡手術は、安全性が確認され、平成14年から保険給付の対象となっています。しかし、技術的難易度も高く施設ごとの適応は違います。当院では、内視鏡外科学会にて認定された技術認定医(胃癌)の指導の下、積極的に取り組んでいます。

・腹腔鏡下胃切除術

手術方法は、お腹の中(腹腔といいます)に二酸化炭素を注入し空間を保ち、トロッカーと呼ばれる径5-12㎜程度の筒状の器具を、5本程度腹腔に挿入し、そこから小さなカメラと細いマジックハンドのような鉗子と呼ばれる器具を入れて手術を行います。切離する道具としては電気メスや、超音波メスなどを使用します。また自動ホッチキスのような縫合する器械も用います。
腹腔鏡手術の利点は、傷が小さいため痛みが少なく、術後の回復が早い点です。また整容性にも優れており、術後の心理的な面でも利点があります。また近年の技術的進歩もあり、小さなカメラを通して、非常にきれいなハイビジョン画像を得られます。従来の手術では見えなかったような、血管が確認でき、細かい神経を温存することもできるようになり、より安全で精細な手術が出来ます。そのため、一般的に開腹手術と比べて出血量も少なくなります。また当院では、「単孔式腹腔鏡手術」という臍の2-3㎝の傷のみで行う、胃切除手術も取り入れています。術後はほとんど傷が残らず、手術をしたかどうかもわからない程度になります。
しかし腹腔鏡手術の欠点もあります。それは、実際に手で触ることはできず、鉗子を介して触るため、触覚が低下します。細かな操作が多くなるため、手術時間が少し長くなることがあります。また新しい治療であるため、長期的なの成績の蓄積が少ないことがあります。

・当科における取り組み

当科では、全ての胃癌術式において腹腔鏡手術を導入しています。
幽門側胃切除術、胃部分切除術にとどまらず、胃全摘術、噴門側胃切除術においても腹腔鏡手術を導入しています。また進行胃癌においても、安全性を十分に担保できると考えられた症例には、腹腔鏡手術を行っています。また体腔内吻合を行い、創をできるだけ小さくした完全腹腔鏡手術を行っています。
手術1-2日前に入院していただき、術後は10日前後で退院となります。

・単孔式腹腔鏡下胃切除術

また早期胃がんに対しては、さらなる整容性や低侵襲性を追求し「単孔式腹腔鏡下胃切除術」を導入しています。臍部の2-3㎝の創のみで行う手術で、術後はほとんど傷が残らず、患者様満足度が非常に高くなっています。

・拡大手術

また、高度進行胃癌に対しては、化学療法を併用しつつ拡大手術も行っています。手術単独では治癒が困難な症例に対しては、化学療法を併用し、場合によっては大動脈周囲リンパ節郭清、膵体尾部合併切除、肝部分切除などの拡大手術を行い、根治を目指した治療戦略をとっています。

② 薬による治療(化学療法、抗がん剤)

化学療法、抗がん剤治療ともいわれ、近年新しい薬のエビデンスが出てきています。分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬など新しい機序の薬も保険適応となりました。「胃癌治療ガイドライン」による、最新の治療を提供させていただきます。また、近年は手術成績を向上させるために、手術と薬による治療を組み合わせる方法も行っています。

胃粘膜下腫瘍 -GISTなど

胃粘膜下腫瘍に対しては、機能温存手術である、胃部分切除術を行っています。極力胃の切除範囲を小さくして機能を温存しています。腹腔鏡下で手術を行うことにより、胃の切除範囲のみならず、体の創に関しても極力小さくしています。
また腹腔鏡のみでは困難な症例に関しては、消化器内科Drによる内視鏡と共同して行う、腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を取り入れています。また単孔式腹腔鏡手術を行うことでさらなる低侵襲、整容性の向上も得られています。

・集学的治療

抗がん剤と、手術を組み合わせた治療法です。根治手術が難しい場合でも、化学療法を行い腫瘍の縮小が得られれば手術が可能な場合もあります。様々な治療法を組み合わせることで治療成績を向上させています。

また噴門部近傍の後壁病変など、LECSでも対応困難な部位に関しては、内視鏡併用の胃内手術も行っています。

最終更新日:2024年12月18日

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