独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院

診療科のご案内

緩和ケア・ペインクリニック科

緩和ケア・ペインクリニック科のご紹介

当科は2023年4月から常勤医1名を採用し新設された診療科です。
ペインクリニック外来では、症状や身体所見から多角的に痛みの原因を診断し、薬物療法だけでなく神経ブロックを含めた治療法を駆使して痛みを軽減・消失させQOLを向上させます。

※ペインクリニック外来の受診はかかりつけ医からの紹介状、事前予約が必要となります。

ペインクリニック外来における治療について

日本人の多くは、何らかの慢性の痛みを抱えて生活しています。慢性痛は、肩関節周囲炎、筋・筋膜性疼痛、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、帯状疱疹後神経痛など数多くあり、その原因と病態は様々です。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は、水疱が出現して皮膚科などを受診され、抗ウイルス薬で治療が行われます。多くの患者さんは、水疱から痂皮化していくと痛みが軽減しますが、高齢の場合や皮膚の症状が激しい場合は、帯状疱疹後神経痛になって痛みが残存することがあります。当科は、帯状疱疹が最も多い胸部には、硬膜外ブロックや肋間神経ブロック、腹部には硬膜外ブロックや末梢の脊髄神経ブロックなどを行い、神経として最も多い額から頭部に発症する三叉神経第一枝には、眼窩上神経ブロックを行っています。末梢神経ブロックは超音波装置を使って神経が分布する位置を確認し、安全に穿刺するようにしています。

頸椎症性神経根症

頸椎椎間板ヘルニアなどにより頚髄から神経が出てくるところが狭窄(図1、図2)することで、腕や指に痛みや痺れが出現します。頸椎症性神経根症の急性期は、整形外科で内服治療や理学療法などが行われますが、当科では、神経根ブロックを行っています。神経根ブロックは、超音波装置を用いて痛みの原因にあたる神経根部を確認して穿刺し、局所麻酔薬と抗炎症作用を持つステロイドの薬液を注入します。神経根ブロックは数回を目安に行っています。

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図1:左C6/7
椎間レベルで椎間孔の狭小化が認められる。
図2:左C6/7
椎間レベルで椎間孔の狭小化が認められる。
腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア

腰椎や周囲の靭帯など支持組織の変形・変性などでおこる腰部脊柱管狭窄症や椎間板の脱出による腰椎椎間板ヘルニアは、腰髄から神経が出てくるところが狭窄して、お尻や足に痛みや痺れが出現します。

当科では硬膜外ブロックを行っています。硬膜外ブロックは5回を目安に行っています。腰部脊柱管狭窄症は年齢とともに組織の変形・変性が進むため、神経ブロックの効果は一定程度にとどまることも多く、痛みを減らして日常生活のQOL向上が主な目的になります。

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図3
腰椎全体に脊柱管狭窄を認める。
特にL3/4/5で強く狭窄が見られる。
図4
強く狭窄が見られるレベルの髄腔は消失している。

神経ブロックは、抗血栓療法の内服をされている場合、薬剤毎に一定期間の休薬をしないと施行できないものがあります。そして、神経ブロックを適切に行ったにもかかわらず、痛みの十分な軽減が得られないこともあります。ペインクリニックでは慢性化した痛みと「うまく付き合っていく」ことを患者さんと模索する診療を心掛けています。

緩和ケアにおける治療について

緩和ケアにおける身体的苦痛、その中の痛みに対しては、慢性痛で用いられる薬に加えて医療用麻薬に分類されるオピオイドを用いて、がんの強い痛みの軽減をはかります。がんの痛みに用いられる薬はこの 10 年で多様になりました。しかしそれらを駆使しても痛みが減らせない時の治療法の一つが、神経ブロックになります。がんの痛み治療で用いる神経ブロックは慢性痛と場合と異なり、できるだけ永久的に神経を遮断することを目的とします。
手術麻酔で術後の痛みに対して用いられる持続の硬膜外ブロックと同じ方法で、カテーテルと呼ばれるチューブを背中から挿入して、持続して薬液を注入することで痛みの軽減を継続します。長期的にカテーテルを入れておいて痛みのコントロールを行う必要がある場合は、カテーテルを皮下に埋め込みポートを作成する方法があります。腹部の痛みに対しては、腹腔神経叢ブロックに代表される自律神経系の神経をアルコールを用いて遮断する神経ブロックがあります。神経ブロックで穿刺する方法は、レントゲン透視によるものとCTを用いるものがあります。当院に入院されているがん患者の方々に緩和ケアチームがかかわり、神経ブロックの適応を含めて症状緩和に努めています。
今後は、緩和ケア外来を開設する予定にしています。外来通院中のがん患者さんで、がんによる身体症状をともに考えていけるような診療体制を現在進行形で作っています。

放射線科との連携について

がんの痛みに対する腹腔神経叢ブロックなどはより安全な神経ブロックを行うため、CTガイド下における穿刺に熟練している放射線科医と連携する体制を予定しています。

最終更新日:2024年03月31日

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