ペインクリニック
ペインクリニック外来における治療について
日本人の多くは、何らかの慢性の痛みを抱えて生活しています。慢性痛は、肩関節周囲炎、筋・筋膜性疼痛、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、帯状疱疹後神経痛など数多くあり、その原因と病態は様々です。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹は、水疱が出現して皮膚科などを受診され、抗ウイルス薬で治療が行われます。多くの患者さんは、水疱から痂皮化していくと痛みが軽減しますが、高齢の場合や皮膚の症状が激しい場合は、帯状疱疹後神経痛になって痛みが残存することがあります。当科は、帯状疱疹が最も多い胸部には、硬膜外ブロックや肋間神経ブロック、腹部には硬膜外ブロックや末梢の脊髄神経ブロックなどを行い、神経として最も多い額から頭部に発症する三叉神経第一枝には、眼窩上神経ブロックを行っています。末梢神経ブロックは超音波装置を使って神経が分布する位置を確認し、安全に穿刺するようにしています。
頸椎症性神経根症
頸椎椎間板ヘルニアなどにより頚髄から神経が出てくるところが狭窄(図1、図2)することで、腕や指に痛みや痺れが出現します。頸椎症性神経根症の急性期は、整形外科で内服治療や理学療法などが行われますが、当科では、神経根ブロックを行っています。神経根ブロックは、超音波装置を用いて痛みの原因にあたる神経根部を確認して穿刺し、局所麻酔薬と抗炎症作用を持つステロイドの薬液を注入します。神経根ブロックは数回を目安に行っています。
図1:左C6/7 椎間レベルで椎間孔の狭小化が認められる。 |
図2:左C6/7 椎間レベルで椎間孔の狭小化が認められる。 |
腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア
腰椎や周囲の靭帯など支持組織の変形・変性などでおこる腰部脊柱管狭窄症や椎間板の脱出による腰椎椎間板ヘルニアは、腰髄から神経が出てくるところが狭窄して、お尻や足に痛みや痺れが出現します。
当科では硬膜外ブロックを行っています。硬膜外ブロックは5回を目安に行っています。腰部脊柱管狭窄症は年齢とともに組織の変形・変性が進むため、神経ブロックの効果は一定程度にとどまることも多く、痛みを減らして日常生活のQOL向上が主な目的になります。
図3 腰椎全体に脊柱管狭窄を認める。 特にL3/4/5で強く狭窄が見られる。 |
図4 強く狭窄が見られるレベルの髄腔は消失している。 |
神経ブロックは、抗血栓療法の内服をされている場合、薬剤毎に一定期間の休薬をしないと施行できないものがあります。そして、神経ブロックを適切に行ったにもかかわらず、痛みの十分な軽減が得られないこともあります。ペインクリニックでは慢性化した痛みと「うまく付き合っていく」ことを患者さんと模索する診療を心掛けています。
最終更新日:2024年08月01日